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哲学入門(バートランド・ラッセル著)11章 メモ(4)

 ラッセルの哲学入門(参考1)11章に、抜粋と読書メモの続きです。

 

P139、7行~P140、1行
 どの一般的原理でも、原理よりも個別事例の方が明証的である。「いかなるものも、ある性質を持つと同時に持たないことはありえない」とする矛盾律は意味が理解されるとただちに明証的になる。
 しかし、「今見ているバラは赤いと同時赤くないということはあり得ない」という命題よりは明証的ではない。バラの一部は赤くない(という反論)は、バラ全体を見ればはっきりしている(ので、茎や葉が赤くないということは議論の主旨から外れる)し、赤かピンクか(迷ってしまう場合は命題の正誤が決められないという反論)については、赤を定義することで(命題の正誤の)答えが出る。
(このように)一般的原理は個別事例を通して理解されることが多い。個別事例に頼らずに済むのは抽象的思考の扱いに慣れた人だけだ。
<読書メモ>
 我々は抽象を抽象だけで処理することに慣れていない。
 勿論抽象にはレベルがあって、より個別に近い抽象もある。たとえば、算数の問題を解いた後、xやyに具体的な数字を入れてみて数式が合っているかどうかを確認するような、検算という行為は元の式よりも個別に近いレベルの抽象と言えるだろう。
 しかし、xやyから成る式を沢山見てきた人にとっては、検算しなくてもその式の正誤がわかってしまう。抽象を抽象として処理するにはそれなりの訓練が必要なのだろう。
 哲学書の分かり難い部分は、抽象を個別のレベルに落とさずに説明している箇所だ。以前当Blogで紹介した死に至る病の冒頭部分がその例として挙げられる。そこに書かれた抽象的な内容に対し、私みたいな凡人は試行錯誤で個別事例を当てはめ、パズルを解く様に読み解く他に手段はない。

 

参考1 哲学入門 バートランド・ラッセル著、高村夏輝訳、ちくま学芸文庫、2018年、第二十刷
参考2 http://www.gutenberg.org/files/5827/5827-h/5827-h.htm