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哲学入門(バートランド・ラッセル著)14章 メモ(7)

 ラッセルの哲学入門(参考1)14章「哲学的知識の限界」の、抜粋と読書メモです。


P181、1行~P181、15行
 空間と時間と同様のことが他の分野でも生じている。


 アプリオリな原則を使って宇宙の在り方を指定する試みは破綻し、かつて可能性を狭める役割をしていた論理は、今や常識では辿り着けない無数の選択肢を提案し、想像力の解放者となった。


 論理のもたらす多くの世界から現実のものを選択するのは経験の役目となった。それゆえ存在するものに関する知識は経験から学べることに限られる。この経験には記述によって得られる知識も含まれる。


 記述による知識の取得は常にある対象を、それを含意するデータから推論する必要があり、そのためには普遍間の結びつきを知っておかねばならない。例えば経験を通じて知識を得るには常に「センスデータは物的対象のしるしである」という原理が必要だが、この原理そのものが普遍間の結びつきを示している。


 そしてこの原理によって初めて経験から物的対象の知識が得られる。同じことは因果法則にもあてはまり、もっと一般性の少ない重力法則の原理についても言える。
 

 

<読書メモ>
 アプリオリな原則から宇宙全体を構築しようとした破綻した試みは、新しい論理により破綻したのであるから、純粋な観念や精神世界の試みではない。経験は記述を含むという部分を含め、この部分は後述される哲学と科学の共通点と相違点の説明につながっていく。
 そして、記述による知識の修得と、センスデータの面識による知識の修得の共通点は「普遍間の結びつきを知っていること」だとラッセルは言う。これまでそれらの共通点を積極的に述べてはいないが、記述による知識の修得について「心理的推論の中に後付けでもよいので論理的推論が為される場合は派生的知識を獲得するといってもよい」(参考1 P164、6行~)と述べており、これも普遍間の結びつきを知っていることに基づく。


 センスデータの面識による知識の修得については第5章に書かれている。(参考1 P59、10行~P60 、4行)面識は抽象観念を通して我々に理解されるが、この抽象観念を普遍と呼ぶとラッセルは定義している。やや戸惑ったが、私はこのあたりを読み返すことで「『センスデータは物的対象のしるしである』という原理が必要だが、この原理そのものが普遍間の結びつきを示している」ということを理解したい。


また、因果法則については後の説明はないが、普遍間の結びつきを探すことで理解されるのだろう。このへんは本書第7章で帰納原理の解説の際に行っている。(参考1、P87~)

 

 

参考1 哲学入門 バートランド・ラッセル著、高村夏輝訳、ちくま学芸文庫、2018年、第二十刷
参考2 http://www.gutenberg.org/files/5827/5827-h/5827-h.htm