作文練習

何か書くと楽しい、かもしれない。

「語りえぬものを語る」 読書メモ(第12章、その2)

 本書(参考1)ウィトゲンシュタインの研究者である野矢茂樹氏の著書だ。難しいので抜粋とメモを残しながら読みたい。抜粋といっても私の理解できた内容に文章を崩している。本記事は12章の注釈に関する。


 以下、本文抜粋。

 

P208
1、    行為空間と理由の空間
 行為空間は①概念所有②習慣による囲い込み③世界像により制限された論理空間の(ひとつの)部分だ。これらは人によって異なるので行為空間も人によって異なる。
理由付けや正当化の可能性の全体を、ウィルフリッド・セラーズは「理由との論理空間」と言い、ジョン・マクダウェルはそれを受けて「理由の空間」という概念から論理を展開した。


 著者はこの理由の空間をもとに考察する。


 例えば熟達した棋士とヘボ碁打ちとは(碁の理解の深さという意味で)行為空間が異なる中で理由説明や正当化が為されることがある。熟達した棋士はヘボ碁打ちに囲碁について説明する場合、ヘボ碁打ちの行為空間に合わせた説明が必要である。一方でヘボ碁打ちが上達を目指すならば、自分の行為空間を修正・拡大し、概念を習得しその理解を深め、必要な習慣も形成せねばならない。必要な世界像を獲得しなければならない場合もあるだろう。


 そういった実践を通じて目指す行為空間が一致した状態を「理由の空間」と言うのだろうと著者は理解する。

 

 P212
2、    進化論的正当化
 進化論的正当化とは、我々が生き延びてきたことを根拠に我々の環境に対する信念は正しいはずだとする議論である。


 これは少なくとも今まで述べてきた帰納に関する議論に対しては無力である。進化論的正当化はまさに斉一性の原理を前提にしている。前述の通り斉一性の原理は斉一性の原理を根拠にしているため、斉一性の原理を進化論的に正当化することはできない。

 


参考1 語りえぬものを語る 野矢茂樹著 講談社学術文庫 2020年、第1刷