作文練習

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哲学入門(バートランド・ラッセル著)11章 メモ(8)

 ラッセルの哲学入門(参考1)11章の、抜粋と読書メモの続きです。

 

P142、7行~P143、9行
 記憶は問題を生じさせる。記憶は間違いやすいことから直観的判断全般の信頼性が疑わしくなるからだ。まずは間違いやすい領域から考えて行こう。
記憶の信頼性は経験の鮮やかさと時間的近さに比例する。三十秒前に家に落雷があれば、閃光があったという記憶は信頼できる。そこまで鮮やかではなくとも、直前に起きたことは同様に信頼できる。例えば私は三十秒前も同じ椅子に座っていたと確信できる。
 しかし一日を振り返ると、はっきり確実に覚えていること、考えたり一緒に起きたことを思い出してようやく確信できること、まったく確信できないことがある。私は今朝朝食を採ったことを覚えているが、朝食に興味がない人はそれを疑うだろう。そして朝食時の会話には容易に思い出せることから多少努力が必要なものまである。更には思い出したが疑わしいものや、まったく思い出せないものまである。
 このように、記憶の自明性の度合いは連続的に推移し、記憶の信頼性もそれと一致する。

<読書メモ>
 記憶の自明性は信頼性と一致し、それは印象の強さ(鮮やかさ)に比例し時間の経過に反比例する。逆に間違いやすさは印象の強さに反比例し、時間に比例する。そして、最も大事なことは、記憶の自明性は連続的に推移するということだ。
 記憶の自明性は興味の度合いによって異なるし、昨日の記憶の自明性と今日の記憶の自明性は異なる。
 記憶している対象から得られるイメージをもとに判断する場合、昨日と今日のイメージの差異について敏感になるべきだろう。この敏感さを曇らせることで問題が生じるが、曇らせるのは自分の信念や一貫性だ。これについては次回のお楽しみということで。

 

参考1 哲学入門 バートランド・ラッセル著、高村夏輝訳、ちくま学芸文庫、2018年、第二十刷
参考2 http://www.gutenberg.org/files/5827/5827-h/5827-h.htm