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哲学入門(バートランド・ラッセル著)11章 メモ(6)

 ラッセルの哲学入門(参考1)11章の、抜粋と読書メモの続きです。

 

P140、13行~P141、8行
 最終的に融合するかもしれないが、自明な知覚の真理には二種類ある。
 一つ目は、センスデータを分析せず、それが存在することを主張すること。厳密には「これがある」と判断する場合だ。
 二つ目は、ある対象を複合的な感覚で捉えた時に、ある程度の分析が加えられる場合である。「この赤い色片は丸い」という判断も知覚判断であるが、一つ目のものとは種類が異なる。一つの色片のセンスデータは「赤い」と「丸い」の二つの性質を持つ。我々はまず「赤い」と「丸い」の二つの分析を行い、「この赤は丸い」という文章を通じてそれらを再び結合する。
 別の例を示すと、「これ」と「それ」が同時に見えているとき、「これはそれの右にある」と判断される場合である。
 (二つ目の自明な知覚の真理において、)センスデータは互いに何らかの関係がある構成要素が含まれており、判断はこれらの構成要素が関係を持っていると主張する。

 

<読書メモ>
 ・一つにまとまる、融合する coalesce
 ・自明な知覚の真理 self-evident truths of perception
 ・センスデータ sense-datum (本段落ではsense-dataではなくsense-datum(dataの単数形)と記載されている。「“一つの”センスデータは複数の要素を持つ」という説明を明確にするためだろう)

 

 特に二つ目の、複数の要素から成るセンスデータがある、という部分が重要だ。
 次の段落から「記憶」という判断材料について議論が始まり、自明のレベルについての議論に発展するが、議論のベースになるのは「複数の要素から成るセンスデータ」である。多分。
 また、注釈34(参考1、P212)に、ラッセルが真理という言葉を使うとき、事実から判断された真理(あるいは真となる命題そのもの)と、何かを真と判断するに至った事実そのものを真理と言う場合の二つがあると記載されている。「知覚の真理」とは後者の用法だと推測する。


参考1 哲学入門 バートランド・ラッセル著、高村夏輝訳、ちくま学芸文庫、2018年、第二十刷
参考2 http://www.gutenberg.org/files/5827/5827-h/5827-h.htm