作文練習

何か書くと楽しい、かもしれない。

怒りとギュゲスの指輪

 プラトンの著書「国家」にギュゲスの指輪という寓話が出てくる(参考)。自分の姿を自在に消すことができる指輪があって、それを使うと誰にも知られずに悪事をはたらくことができるという話だ。こんなものを手にしたら私の本性が現れてしまう。想像するだけで恐ろしい道具だ。

 

 昨日のブログ記事で私は、怒りを相手にぶつける時にはぶつけても良い相手かどうかの判断が瞬時に行われるということを書いた。ギュゲスの指輪はその判断を不要とする。自分の頭の中の正義に従って、それを遮る人間にいつでも罰を下すことができるのだ。怒りだけでなく欲望についても同じことが言える。

 

 怒りと欲望を抑制しなくなった自分はいったいどんな形をしているのだろうか。そしてそれを正視できない私は、私自身にいったいどんな嘘をつくのだろうか。


参考 国家(上) プラトン著 藤沢令夫訳 岩波文庫 2008年 第49刷 P119