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哲学入門(バートランド・ラッセル著)15章 メモ(4)

ラッセルの哲学入門(参考1)15章「哲学の価値」の、抜粋と読書メモです。


P190、7行~P191、4行
 哲学の価値はその不確実さに求めるべきだ。哲学的素養のない人は、習慣や常識から生まれる偏見にとらわれる。こういう人にとって世界は明確で有限だ。日常の対象に問題を見出さず、馴染みのない可能性を軽蔑し拒絶する。


 しかし哲学は、最もありふれたものを不十分にしか答えられない問題に導き、疑いに対して多くの解答の可能性を指摘できる。


 哲学はそうやって私たちの思考を広げ、習慣の抑圧から解き放つ。


 ゆえに哲学は「どんなものが存在するか」については確信を減らすが、「どんなものが存在しうるか」については知識を増やす。哲学は開放的な懐疑を知らぬ人から独善性を取り除き、見慣れたものに見慣れない側面を示し、私たちの驚異の念を保つのだ。
 


<読書メモ>
 私の感覚では、世界が明確で有限であればあるほどその人は幸せを感じるだろうという気がする。世界は自分を中心に安定するからだ。見慣れたものが不意に見慣れない側面を見せたとしても、それを軽蔑して拒絶すれば幸せは続く。


 「世界」や「見慣れたもの」を、「自分」という言葉に置き換えてみると良く分かる。自分が自分にとって明確で有限であるとすれば、「〇〇だけは譲れない」、「昔は××だから良かったが今の世の中は駄目だ」、「俺は俺という人間だから△△なんてできるわけがない」、「つい◇◇をやってしまうけどしかたがない」といったことを信じ続けることができる。自分の中に軽蔑すべき要素が見えたとしても、他人や世の中のせいにできれば自分自身の心は安定する。


 人は年齢を重ねれば重ねるほど習慣や常識が心の多くの部分を占めるようになる。気を付けていないと、世界の境界線はどんどん明確になり、自分が自分につく嘘はどんどん巧妙になっていく。これらは逆らい難く、強い誘惑だ。気を付けていないと私はどんどん幸せになってしまう。

 


参考1 哲学入門 バートランド・ラッセル著、高村夏輝訳、ちくま学芸文庫、2018年、第二十刷
参考2 http://www.gutenberg.org/files/5827/5827-h/5827-h.htm