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哲学入門(バートランド・ラッセル著)8章 メモ(3)

哲学入門(参考1)の8章、P103の1行目からです。

 

<要約1>
カント以前に、ヒュームはこれまで分析的と思われていたこと、とりわけ原因と結果の結合が本当は総合的であることを発見した。(P103、1~3行)
<読書メモ1>
 さらっと「総合的(synthetic)」という言葉が出てくるが、これは分析的(analytic)と同じくらい重要な概念だ。それなのに「総合的」の説明は無い。不公平だ。
 そんなわけでカントの純粋理性批判から総合的(綜合的)の説明を引用する。
「術語Bは主語Aと結びついてはいるが、しかしまったくAという概念のそとにある」(参考3 P66から引用)
分析的判断:
 術語と主語との結びつきが同一の原理によって考えられるもの。別名、解明的判断。
綜合的判断:
 術語と主語との結びつきが同一性によらないで考えられるもの。別名、拡張的判断。
(参考3 P66から引用)

 主語Aに含まれない性質をくっつけるのが綜合的の意味だ。主語Aは術語Bをくっつけ、次は術語Cをくっつけ、どこまでも拡張していくことができる。

 ここで注意すべき点がある。カントの言う分析的判断は恐ろしく厳密であるため、対する綜合的判断は非常に幅が広いのだ。例として、「物体は重さを持つ」という命題はカントにとって綜合的判断である。物体に重さの概念は含まれないとするのだ。更には、色さえ綜合的判断だと言い切るのである。
 ところがラッセルは、色は物のセンスデータだから綜合的は言い過ぎだろう、カント先生、間違ってねえか?と考えたみたいだ。本書前半のハイライトである。

 


参考1 哲学入門 バートランド・ラッセル著、高村夏輝訳、ちくま学芸文庫、第二十刷
参考2 http://www.gutenberg.org/files/5827/5827-h/5827-h.htm
参考3 純粋理性批判(上) カント著、篠田英雄訳、岩波文庫、第72刷