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哲学入門(バートランド・ラッセル著)15章 メモ(2)

 ラッセルの哲学入門(参考1)15章「哲学の価値」の、抜粋と読書メモです。


P187、14行~P189、13行
 哲学は知識の獲得を第一の目的とする。哲学は、私たちの確信、偏見、信念を批判することで、一連の科学を体系化する知識を求めている。しかし哲学がそれに成功したとは言えない。科学の研究者に、得られた真理は何かと聞けば多くの答えが返ってくるだろう。しかし、哲学の研究者に同じ質問をすれば、何も成し遂げなかったと答えるだろう。


 その理由の一つは、知識が得られたとたん、その主題は哲学から一個の独立した科学になることにある。例えば天文学、力学、心理学も元は哲学だった。はっきりと答えられる問題は科学の中にあり、まだそうなっていない問題だけが哲学と呼ばれている。


 他の理由としては、人間には解決できない問題が多く存在することだ。


 問題の例としては、宇宙の在り方を決める一貫したものはあるか、それとも原子が偶然集まっただけなのか。意識は知恵を育み続けるのか、それとも惑星に偶然生まれた存在に過ぎないのか。善悪は宇宙にとっても重要か、それとも人間だけに重要なのか、といったものだ。


 これらの問が解答可能かどうかはさておき、哲学者の解答はその正しさを論証できないものだった。


 しかし、問いに取り組み続けること、問いに取り組み続ける大切さを私たちに気付かせること、問いへの取り組み方を検討すること、確かめられる知識にしか目を向けないことで圧殺される、宇宙に対する思索的関心を生かし続けることも哲学の仕事だ。

 


<読書メモ>
 ここでは哲学の効用が書かれている。哲学は知識を明確にすること。明確になった知識は哲学から科学にカテゴリーが変化すること。そして解答できない問いに対しても哲学は解答の努力を続け、それが大切だと世に知らしめること。


 私が哲学に求めるものはもう一つあって、ものごとや人を理解するためのヒントだ。これは本章の中盤あたりから説明される。


 哲学はロールプレイングゲームにおける鍵みたいなものだ。拾った時は何に役立つのか分からないが、先の場面で登場する箱や扉を開ける時に役に立つ。自力で開けられる人はいると思うが私には出来ない。


 箱や扉を開けることが必ずしも自分にとって役立つとは限らないが、壮大で複雑な世界なのに鍵が無いばかりに細い一本道しか見えないなんて、勿体ないと思うのだ。

 

 

参考1 哲学入門 バートランド・ラッセル著、高村夏輝訳、ちくま学芸文庫、2018年、第二十刷
参考2 http://www.gutenberg.org/files/5827/5827-h/5827-h.htm