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哲学入門(バートランド・ラッセル著)12章 メモ(15)

 ラッセルの哲学入門(参考1)12章「真と偽」の、抜粋と読書メモの続きです。

 

P155、8行~P156、8行
 以上で真と偽の区別をどう判断するかが分かった。
 定義すると、
(1)    判断するときにはいつも、判断する心と判断が関わる諸項がある
(2)    心を判断の「主体」とするなら、残りの項を判断の「対象」という
(3)    主体と対象をまとめて判断の構成要素とする
(4)    判断するという関係には「向き」や「方向」と言って良いものがある

 

 (4を)比喩的に言うなら、判断はその対象を順番に並べることだ。例えば「キャシオはデズデモナを愛している」という判断は「デズデモナはキャシオを愛している」という判断とは異なる。あるいはキャシオが「デズデモナはオセロを愛している」と判断する場合もまた構成要素は同じでも順番が違うため、判断が異なる。


 判断のこうした性格を「向き」や「方向」と言うが、判断だけではなくすべての関係にも共有されている。順序や列をはじめとする数学的概念の大半もこの「向き」から生じたものだ。

 

<読書メモ>
・    『「判断するという関係には「向き」や「方向」と言って良いものがある』・・・英文では「向き」はsenseである。普通なら「感覚」と訳すが、本章では語順や関係の順について後述してあるため、「向き」と翻訳されている。
・    屈折語、主格、対格の説明は分からないので割愛した。


 現実にある問題は大抵いくつかの事柄が複雑に絡み合っており、事柄には事実があり事実関係があり、人の思考と感情があり人間関係もある。更にはそれらの過去と現在と未来の因果関係を含む、おそろしく複雑な状態を伴う。

 

 現実の問題を考える上で大事なのは、以下の3つだと言える。
上述(2): 「判断の主体は誰のどういう立場の心であるか、そしてそれはどの項の集合によって為されたのか」
上述(3): 「判断の主体を含めた構成要素は何か(どう定義するか)」
上述(4): 「関係の‘向き’や‘方向’は適正か」

 

 各項の関係を、思い込みを排除しながら整理するには、まず項を挙げてそれを順番に並べてみることが必要だ。その中には<AとBはXという関係にある>という命題の形の項が出現するかもしれない。しかし、その時はそれが本当に真であると固定された項かどうかを疑ってみることも必要なのだろう。

 

 しんどい作業だが、我々は現実の複雑さに耐えなければならない。

 


参考1 哲学入門 バートランド・ラッセル著、高村夏輝訳、ちくま学芸文庫、2018年、第二十刷
参考2 http://www.gutenberg.org/files/5827/5827-h/5827-h.htm