作文練習

何か書くと楽しい、かもしれない。

ルサンチマン刺激話法

 ルサンチマンとは、主に弱者が強者に持つ「憤り・怨恨・憎悪・非難」の感情であり、それは弱者の強者に対する無力感が元になっている。

 

 今回は、自分の中のルサンチマンを刺激される話法に関する話だ。

 

 例えば、誰かの話を聞く時、話し手が第三者を評して「わかっていない」「レベルが低い」「無駄な」「無能な」「使えない」という形容詞を使った場合は「ルサンチマン刺激の話法」が使われている可能性が高い。直接の会話でもよくあるが、テレビの報道ショーでも使われるレトリックだ。最近は動画配信でも多いと思われる。

 

 これらのネガティブな形容詞はルサンチマンを適度に刺激する。何だか気持ち良くなってしまうのだ。そうすると、まるで内容が論理的で正しいことの様に思えてくる。人は、過激だけど正しことを言う頭の良い人が大好きだ。これらネガティブな形容詞は、過激さと頭の良さを簡単に演出できてしまう、とても便利な言葉である。

 

 例えば政治家みたいに権力構造の上にいる人を評して「わかっていない」と言うと、その政治家は自分よりも知力が劣っているような錯覚を覚える。それでも政治家は政治家であり続けるので、どうにもならない無力感だけが増す。しかしその政治家を見下すことでその無力感と同じ程度に快感もまた増すのだ。

 大きな力に対する無力感と人を見下す快感を同時に引き出すことがルサンチマンの刺激の特徴だ。水戸黄門の様に、今まで威張っていた悪代官が黄門様と自分の足元にひれ伏す時に感じる快感である。

 

 別の例では、一般庶民を「わかっていない」と評することもある。すると、自分と比べて一般庶民の理解力が劣っているような錯覚を覚える。世間という強大なパワーに対する無力感がある一方で、自分が一般庶民を見下しているような快感を覚えるのもルサンチマンの刺激だと言える。

 

 こうしたレトリックは政治的扇動に使われることもある。その場合は大抵「強そうに見える人」が「誰もが反対できない前提」を元にして「全体主義への誘導」を行うと相場が決まっている。

 

 チェックポイントはこんなところだろうか。
 ・人を貶める形容詞を使う
 ・無力感を煽ると同時に見下す快感を示して聞き手のルサンチマンを刺激する
 ・正論を含む
 ・主張は具体性に欠けるか、もしくは実現不可能なほど極端かのどちらか

 

 政治的扇動を行う話し手は必ず権力側の組織や人物を批判するが、話し手本人の本質も権力志向だ。その話し手が民衆に熱狂的に受け入れられている時は、聞き手側も知らず知らずのうちに権力志向と全体主義に絡め捕られてしまっているはずだ。

 

 私達はそれに気付く練習をしなければならない。