あおり運転とニーチェ的ルサンチマン
彼はまず「悪い敵」を、すなわち「悪人」を考想する。(中略)その対照物として、更にもう一つ「善人」を案出する――これが自分自身なのだ!……
(道徳の系譜 ニーチェ著、木場深定訳、岩波文庫、第76刷、P51より引用)
あおり運転をする人は、前を走る車を「悪い敵」と見做し、その対照物として自分を「善人」あるいは「正義の人」に仕立てる。
追い越し車線を(おそらくは法定速度で)走っている車がいなければ、自車は数台前に行くことができるかもしれない。しかし、たったそれだけの理由で人の命を奪いかねない制裁ごっこをして良いわけがない。
鬱積したルサンチマンはジェット風船のように噴き出すきっかけを待っている。そして噴出の矛先は常に弱い者に向かう。彼はその程度には怜悧なのである。