作文練習

何か書くと楽しい、かもしれない。

死に至る病を読む(4)

 キェルケゴール死に至る病の4頁だけを読むシリーズです。

 今回も岩波文庫の文章を示し、これに対応する英文をネットで調べて意味を考えたいと思います。なお、英文(参考2)のリンクが上手く開きませんが、Google検索にコピペして開くとpdfが開くようです。

 

 今回は一文だけです。

 

自己自身に関係するところのそのような関係、すなわち自己、は自分で措定したものであるか、それとも他者によって措定されたものであるかいずれかでなければならない。

(参考1 P23から引用)

 

Such a relation which relates itself to its own self (that is to say, as self) must either have constituted itself or have been constituted by another.

(拙訳)

 関係そのものを自己自身(つまり、自己)に関連させるそのような関係は、その関係自身を構成するものか、あるいは別のものが関係を構成するものか、どちらかでなければならない。

(解説)

 岩波訳の方がはるかに分かりやすいですね。

 ここでは「措定」という使い慣れない言葉について考えてみたいと思います。Wikpediaによると「措定」は「物事を、その定義とともに呈示すること。『かくかく(斯く斯く)なるものとしてAを措定する』のように用いる。」とあります。

 英文ではconstituteです。X constitute Y. (XはYを構成する)。例えば12ヶ月(X)は1年(Y)を構成する、という風に使われます。YはXから組み立てられている、みたいな感じでしょうか。定義というニュアンスも含まれるので、最終的には「措定される」という言葉が本当にぴったり来ます。凄い翻訳です。

 自己を措定する主体は誰(何)なのか。ローランドさんの言葉を借りれば「俺か、俺以外か」。死に至る病ではこれをもとに絶望と信仰が語られていきます。

 

続く。

 

参考1 死に至る病キェルケゴール著、斎藤信治訳、岩波文庫、第108刷

参考2 https://antilogicalism.com/wpcontent/uploads/2017/07/thesicknessuntodeath.pdf