作文練習

何か書くと楽しい、かもしれない。

死に至る病を読む(3)

 死に至る病の第一章の最初の4頁を読むシリーズです。難しいですがネットで拾った英文(参考2)とネット翻訳の助けを借りながら言葉の意味を限定していくと、初読の印象ほどは難解ではありませんでした。専門家から見ると間違いだらけかもしれませんが、とにかくチャレンジです。

 

それではまず岩波文庫から。

 

二つのものの間の関係においては関係それ自身は否定的統一としての第三者である。それら二つのものは関係に対して関係するのであり、それも関係の中で関係に対して関係するのである。たとえば、人間が霊なりとせられる場合、霊と肉との関係はそのような関係である。これに反して関係がそれ自身に対して関係するということになれば、この関係こそは積極的な第三者なのであり、そしてこれが自己なのである。」(参考1、P23より引用)

 

以下、引用文に相当する英文を参考に意味を考えたいと思います。

 

In the relation between two, the relation is the third term as a negative unity,

(拙訳)2つの関係の中においては、関係は消極的な統一としての第3項です。

(解説)例として「太郎(仮名)叔父さんと甥の僕」を挙げてみます。太郎叔父さんという、名前だけは知っているけれど会ったことがない人がいるとします。僕と太郎さんは甥と叔父の関係です。1番目の登場人物の僕、2番目の登場人物の太郎さんに対して、甥と叔父という関係を統一したものを第3項(third term)と呼びます。

 一方で、太郎叔父さんは会ったこともない人なので、そういう名前の叔父がいるということ以外に積極的に語るべきことはありません。これがnegative unity(消極的な統一)です。岩波訳ではnegativeを否定的と表現していますが、この後に同じ使い方でpositive(積極的)という形容詞が使われているため、私はnegativeを消極的と理解しました。unityは叔父と甥の関係のことだと思います。

 

and the two relate themselves to the relation, and in the relation to the relation;

(拙訳)そして2つは、2つそれ自身を関係に関連させます。そして(2つは、2つそれ自身を)関係の中において、関連させます。

(解説)例えると「そして僕と太郎叔父さんの関係は、甥と叔父という関係に関連付けられます。そして僕と太郎叔父さんの関係は、“親戚という枠組みの中で”甥と叔父という関係に関連付けられます。」

 この“親戚という枠組みの中で”というところ、つまり“何の中の関係なのか”が後で大事になってきます。

 

such a relation is that between soul and body, when man is regarded as soul.

(拙訳)そのような関係は、人間が魂と見なされるときの魂と肉体の間の関係です。

(解説)心と体でも良いと思います。「人間、心だよ」と言う時、比較対象は体です。人間の中には心と体という異なる概念があるよ、甥がいれば叔父がいるよ、くらいの意味だと思います。

 

If on the contrary the relation relates itself to its own self, the relation is then the positive third term, and this is the self.

(拙訳)もしも、それに反して関係が関係そのものを自己自身に関連させるならば、その関係は積極的な第3項です。そしてこれが自己です。

(解説)さて、もしも太郎叔父さんがいつも楽しく遊んでくれたりお年玉をくれたりすれば、僕は太郎叔父さんに会うのが楽しみになるでしょう。叔父と甥の関係が僕自身に深く関わってくるなら、太郎叔父さんと僕の関係は僕の自己になります。

 僕がその関係を気にするということは、その関係が僕自身に積極的に働きかけているということです。関係が自分自身の何かを揺さぶってくるなら、それは自己だとキェルケゴールは言います。

 

続く。

  

参考1 死に至る病キェルケゴール著、斎藤信治訳、岩波文庫、第108刷

参考2 https://antilogicalism.com/wpcontent/uploads/2017/07/thesicknessuntodeath.pdf