死に至る病を読む(2)
「人間は有限性と無限性との、時間的なるものと永遠的なものとの、自由と必然との、綜合である。要するに人間とは綜合である。綜合とは二つのものの間の関係である。しかしこう考えただけでは、人間はいまだなんらの自己でもない。」(参考1、P22から引用)
Man is a synthesis of the infinite and the finite, of the temporal and the eternal, of freedom and necessity, in short it is a synthesis.
(拙訳)人間は、無限と有限、時間と永遠、自由と必要性の綜合であり、要するにそれは綜合です。
(解説)synthesisは綜合、統合、合成という意味で、後述によると二つのものの関係です。二つのものとしては対立する概念が並べられています。無限と有限は空間に関する対立概念、時間(temporal≒限定された時間)と永遠は時間に関する対立概念です。そして自由とは空間と時間に制約されない概念で、必然とは空間と時間の制約によって成立する概念、例えば物理学みたいなものが挙げられます。従ってfreedom and necessityは空間と時間を包括する対立概念について言っていると思います。あくまで個人の感想ですが。
in short の後ろのitが何を指すのかはよく分かりませんでしたが、単数形なので岩波文庫の通り人間(Man)を意味すると考えるのが自然だと思いました。
A synthesis is a relation between two factors.
(拙訳)綜合は、2つの要素の間の関係です。
(解説)two factorsは対立概念のことだと思います。
So regarded, man is not yet a self.
(拙訳)そう見なされている限りは、人はまだ自己ではありません。
(解説)not yet(まだ~ない) なので、次の段階で人間は自己となります。自己となるのに必要なものが次で語られます。
盛り上がってまいりました!
続く。
参考1 死に至る病、キェルケゴール著、斎藤信治訳、岩波文庫、第108刷
英文参考 https://antilogicalism.com/wpcontent/uploads/2017/07/thesicknessuntodeath.pdf